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2013/12/5

楠の伐採。

チモトヤの父ちゃんから電話。「図書館の前の楠の木、切られたの知ってる?」「知らない」「4本もでっかい木切られてんだよ!腹立ってよ!、何であんなでっかい木、切ったんだって、市役所に電話してやったんだけどよ〜」「見に行ってくるよ」父ちゃんは、この町でちょっと知られた人物だ。

筋の通らないことは、断固として首を縦にふらない。気に入らない客には、とことん感じが悪い。僕たち貧乏人には、「これだけしかないけどいいですか?」って頼むと、次から次へと料理が出て来る。そして、彼は本場フランス仕込みだけに、抜群にうまい!

そんなこんなで図書館前に行った。見るも無惨。首切り役人になって初めてのお勤め?と思われるようないろんな所から、切れない刀を刺したり、押したり引いたりした感じ。可哀想な楠。

市役所と露順に電話!市役所は、「事業計画に入っていますし、根っこが、防火タンクを傷つける可能性がありますので・・・」「あんたの所の防火水槽はどれだけ、でかいんだ?そんな訳ないだろ?」「切った木はどうするの?」「チップにして消却します」「おまえは、馬鹿か?」

露順「父ちゃんからも電話もらったよ。今度の市議会で取り上げて、市長に答えてもらうよ。ひどい事する!」

そして、昨日市議会の日。傍聴。

露順「今、この町は市をあげて植樹祭をやっていて、この何十年もの間生きてきた楠の大木をそう簡単に切っていいのでしょうか?移植することも考えられたのでは?」「そうだ!そうだ!」

市長、不敵な笑いを浮かべ「私も何代か前の市長の時、市会議員として、そのような質問をしたことがあります。その時その市長は、私をこうなだめました。木は切っても育つものです。森も同じです」この人、ホントの馬鹿か、頭がおかしいのか?歴代の市長も馬鹿なのか?この町の市長は馬鹿しかなれないのか?

なんか、もう情けなくなった。こんな人がこの町の市長で、それをニヤニヤ笑いながら、椅子をグルグルしながら聞いている、他の市会議員。寝てる奴もいる。トップ当選の兄ちゃんはいつもウロウロしてるか、今日は探し物してキョロキョロ。駄目だな。

実はその楠を僕たちは手に入れた。これは、うるさい奴は黙らせろ!ってことか?どんなことをしてでも、この楠を無駄死にさせてはいけない。生かしてやらないと。楠彫刻のアーティストがこの木を使って、鎮魂の作品に仕上げてくれるだろう。僕も木っ端を使って作品を創るつもりだ。

ここからは、僕の想像だ。

この楠の木は、ずっと、図書館の窓から子供達が絵本をひろげて、読んでいる姿をいつも楽しみに見ていた。その子供は、大きくなって、市役所に勤めることになった。そして、市長の命令でこの木を切ることになり、彼が選ばれた。自分の罪の深さに苛まれながら、泣きながら木を切った。

木はそんな運命を知ったのは、その朝のことだった。しかし、その木は一瞬で悟った。大きくなったこの子の成長を喜び、痛いけど、今までのここでのことを振り返りながら、切られた。

木は想う。「悩まなくても大丈夫。泣かなくても大丈夫。誰も恨まないし、誰の罪でもない。私はまたアーティスト達によって生き返る。その時また会える」

 




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