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2003/3/31
ねこまや

僕が、まだこの仕事を始めたばかりの頃、「ねこまや」というお店が渋谷にありました。猫の雑貨や絵を扱うお店の草分けです。友達の紹介でこのお店に作品を持っていきました。するとママさんは、大変よろこんでくれて、木の絵を買ってくれました。おまけにお店の看板の仕事ももらいました。それで、金属のアームの部分は軽井沢の佐藤ストーブの佐藤さんに作ってもらいましたので、頑丈に出来ました。しかし、木の文字は何度も雨風にあたって弱くなり、何個も落ちました。何度も直しに行きました。本当なら叱られて当然なのですが、「ねこまや」のママさんは、いつも帰り際に、僕の手にお札をにぎらせるのです。「がんばりなさい」とか「お子さん生まれておめでとう」とか言って・・。やはり生活に困っているのが、手に取るように解ったのでしょうか。ありがたくて、涙が出ました。(僕はまだまだ仕事も今のようになくて、本当に助かりました。)しかし、猫の絵に関しては非常に厳しく、僕がちょっと気をぬいたものを持っていくと、つっかえされました。そのうち「ねこまや」も道路拡張で移転になり、目黒の方に移りましたが、前の「ねこまや」のようにはうまくいかなかったようで、店を閉めました。それから10年くらい経って、原宿の個展に来て下さいました。作品を見て本当に喜んでくれて、誉めて頂きました。僕は誰に誉められるよりもママさんに誉められるのが一番嬉しいのです。その年のクリスマスに彼女にその時、「すてき」って言ってくれた絵を一枚送りました。彼女はそれをとっても喜んでくれたようで、女子高校生のように喜んで電話をくれました。やっと恩返しが出来ると思っていたのですが、そのママさんも2001年に天国に召されました。今頃、天国で猫と戯れていることだと思います。



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