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2009/10/3
こんな人を見たシリーズ

久々の「こんな人を見たシリーズ」この人、2年前から、知ってるんだけど、今年は強烈に印象に残ったので、登場させた。場所は名古屋の某デパートの休憩所。僕がいつも二人展をやっている場所の隣に、パックのお茶や、ジュースの販売機が置いてある休憩所がある。子供連れや、お年寄りや、買い物に疲れた人なんかが、ちょっと休憩できる場所。そこから、「チューゾゾゾー」っとパックのジュースを飲む一際大きな音が聞こえてきた。店員さんが言う。「落武者が来ました!」隣の休憩所を覗くと、ホントだ!彼は2年ほど前から、フラフラっとこの売場にもやって来る。昨年は声を掛けられた。店員さんは、「まず、声を掛けられることはないですよ」僕の作品や、僕のこと気に入ってくれたんだろうか?風貌はそのニックネームのごとく、落武者が髷をスパっと切られて、ザンバラ髪になった感じそのもの。彼は笑わない。何を言うかと思えば「ここ売れる?」意外と、下世話なことを聞くな〜と思ったけど、その言葉にいやみな感じはしない。今年も何時来るんだろうか?って楽しみにしていた。それから、休憩所のテーブルの上に、何やら木で彫ったいろいろな花の彫刻を並べはじめて、その前に座った。彫刻といっても、バルサ材を使った、簡単な彫刻だ!自分で彫ったという。並べ終わると、落武者はそれから、じーっと動かなくなった。まるでその姿は、修行僧の姿でもある。気になったので、「ここで何してるの?」って聞いてみた。「売っている」という。「えっ!ここで?売っていいの?」「県庁の美術部の人がここで売れと言った」という。「へ〜、ところで、これ一ついくら?」と聞くと「一つ50万円」と答える。「へ〜すごいね、いいね」とお世辞を言うと、「いいでしょう〜」と初めて少し笑った。そのまま、1時間ぐらい、テーブルの前に座って、瞑想しているようにしていた。それから、またパックのジュースを買って飲み始めて「チューゾゾゾー」っと大きな音を立てて飲んだ。その間、周りのお客さん達は、落武者を見ないようにしていた。僕はいつか、物好きが来てあの、バルサ材の木彫を買う人が現れるような気がした。



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