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2003/2/8
こんな人を見たシリーズ

ぼくがまだ「ものづくり」の世界に入って間もない頃、浅草橋に皮の材料を買いに行った時にこんな人を見ました。その人は牛革の真ん中に穴を開けてそこに頭を入れてまるでポンチョのようにして着ているのです。下着は付けておらず、横から見るとチンチンが丸見えでした。最初、ちょっと離れて見た時は、まるでギリシャの哲人のようにも見えましたが、段々近づくにつれ彼が今言うところのホームレスだとわかりました。丁度僕はそのころ革細工をやっていて革細工があまり自分にあっていないと感じはじめていた時だったので、その素っ裸に皮を一枚羽織った姿に圧倒され、自分がこまごまとしたことで悩んでいることに恥ずかしさを感じました。おじさんは僕があんまりじっと見ているので、首をかしげこちらを微笑んで見返してくれました。僕はそれがすごく嬉しく何か吹っ切れた気分になったのを憶えています。あのおじさんはやっぱり僕の哲人だったのかも知れません。



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