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2003/6/27
子供の頃のはなし

東京から木村君という子が引っ越して来ました。木村君の家は4階建ての鉄筋コンクリートのアパートです。まだそんなに高いビルはめずらしい頃で、赤土の中からにょきっと生えたような感じを憶えています。木村君に誘われて、僕は生まれて初めて、今で言うマンションの中に入りました。木村君の部屋には、ベッドや勉強机が置いてありました。僕のように、ちゃぶ台の上で宿題をしたり、煎餅布団で寝ている子供にとっては、「かっこいいな〜」って思いました。そして、木村君はお母さんのことを「ママ〜」って呼んでいました。これもテレビでしか見たことのない光景でした。僕のように「お父ちゃん、お母ちゃん」と呼んでいるのはちょっとかっこわるいのかなと思ってしまいました。でも「ここが僕の部屋だよ」と自分の部屋のドアーを開けた時の木村君の後ろ姿で、襟足がすごい毛深いのが見えました。きちんと整頓された部屋とその毛深さがやけにミスマッチしていて、今でも僕の脳裏に焼き付いています。 



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